数学の世界へようこそ!―女性数学者たちが案内する新しいシリーズ
みなさんは『現代数学』という雑誌を知っていますか?これは、大学レベルの数学や最先端の研究について、数学が好きな人なら高校生でも挑戦できるように書かれている、一般向けの数学の雑誌です。
2024年4月号から、この雑誌で新しいシリーズが始まりました。その名前は「現代数学への誘い(いざない)」。このシリーズでは、現代のいろいろな数学の分野を、毎回ちがう研究者が入門的な内容を丁寧に紹介してくれます。
記念すべき第1回目は、私が担当した「代数幾何学」。その次は上智大学・東北大学の中筋麻貴先生による「
「数学をする人」=「男性」…だけじゃない!
ちょっと意外に思うかもしれませんが、これまでの数学雑誌の執筆者は、ほとんどが男性でした。「女性の著者が少なすぎる」と指摘されたこともあります。そこで私は編集部に、「もっと女性の数学者にも記事を書いてもらいませんか?」と提案しました。
「女性数学者」の記事といえば、研究の話よりも「どんな私生活を送っているか」が中心になることが多いのです。でも私たちは「女性数学者」である前に「数学者」です。自分たちの研究や教育のことを、きちんと伝える機会を作りたかったのです。
数学への入り口を、もっと広く・深く
このシリーズは、高校生や大学に入りたての人にもわかるように書いています。数学が好きな人が「もっと知りたい!」「この大学の先生に習ってみたい!」と思ってくれたらうれしいです。
実は、大学での講義や初心者への説明がとても上手な女性数学者はたくさんいます。講演や公開授業で活躍している人も多く、そうした人たちが現代数学の世界への案内役をしてくれたら、きっと楽しいはず!そんな思いで、「現役の大学教員」である女性数学者たちに声をかけることにしました。
いざ探してみると、代数・解析・幾何・数理物理など、いろんな分野で女性が活躍していて、あっという間に1年分の12人がそろいました。中には、「こういう一般向けの記事を書くのは初めて!」という先生もいましたが、みなさん快く引き受けてくれました。
「最先端の研究」だって、女性数学者が進めている!
「なぜ女性ばかりなの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。これまで、難しい研究の記事は男性がほとんどで、女性はわかりやすい話ばかり担当してきた印象があるのです。でも実際には、女性もバリバリの研究者として、最先端の研究を進めています。大学では、その土台となるような基礎の講義も担当しています。このシリーズでは、そうした「1回目の講義のような内容」を通して、「大学の数学ってこんな世界なんだ」と感じてもらえたらと思っています。
この先には、本の出版も?
そして実は――このシリーズには続きがあります。雑誌に載った入門的な内容に加えて、それぞれの先生たちの「今まさに取り組んでいる研究」の紹介もプラスして、本にまとめる計画があるのです!現代数学のいろいろな分野の入り口だけでなく、その先の最先端の話にも触れられる――そんな一冊になりそうです。
数学に興味がある人、大学で学びたい人、そして「数学者ってどんな人?」と思っている人。このシリーズ、そして今後出版される予定の本を、ぜひ楽しみにしていてください!
※2025年7月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。
著者略歴
カブリIPMUにはいろんな国から来た数学、物理、天文学の研究者がいます。
そこで月に一回、いけばなのお稽古を始めました。
角度と長さで説明されているいけばなのテキストは数学が得意な彼らにはなじみやすく、いけばなを通して、日本の四季や文化を楽しんでいます。