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この文章を書いたのは?

株式会社KSKアナリティクス データサイエンス本部 データアナリスト

足立 悠

数学が支え、広がるデータサイエンスの世界

データサイエンスという言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

 この言葉を初めて聞いた人もいるかもしれません。しかし皆さんは、中学生・高校生の数学の授業で既にデータサイエンスを体験しているのです。
 思い出してみてください。数学の授業で次のような問題を解いたことがあるはずです。
・あるクラス40人の数学のテストの点数の平均点を求めなさい。
・あるクラス40人の数学のテストの点数の度数分布表(図1)とヒストグラム(図2)を作成しなさい。

図1(足立先生)

 

 上の問題を解けば、クラス全体でどの程度数学が得意なのか、数学が得意な生徒がどの程度いるのか、などの傾向を掴むことができます。ここで、あるクラス40人の数学のテストの点数「データ」から、平均点・度数分布表・ヒストグラムを求め傾向を掴むことが「サイエンス」にあたります。

 データサイエンスがどのようなものかイメージできたでしょうか?
  データサイエンスは中学校・高校・大学など学びの場だけでなく、社会でも大いに活用されています。例えば次のようなものが挙げられます。
・iPhoneの音声検索アプリ「Siri」
・LINEのAI(人工知能)チャットBot「りんな」
・YouTubeでお勧めされる動画リスト
・ソフトバンク社のAIロボット「Pepper」
・スーパーマーケットやドラッグストア等のお店で発行されるクーポン券
繰り返しますが、このデータサイエンスを支えているものは「数学」です!

先ほど最後に挙げた例について、数学がどのように活用されているか一緒に考えてみましょう。

 皆さんがお店で買い物をする時のことを思い出してみてください。欲しい商品を見つけたらレジへ行き、ポイントカードとお金を渡して精算し、商品とレシートを受け取る、といった手順を踏む人もいると思います。この時、商品とレシートと一緒にクーポン券を受け取ったことはありませんか?

 最近は、全ての顧客に同じ内容のクーポン券を発行せず、顧客の特性を把握し各顧客に最適な内容のクーポン券を発行するお店が増えつつあります。では、どのように「顧客の特性」を把握しているのでしょうか。

 レジで精算する際にポイントカードを渡すと、お店は「どの顧客が、いつ、何を、何個買ったか」という情報(図3・購買データ)を記録しています。またお店は、顧客がポイントカード発行手続きの際に記載した情報(図4・顧客データ)も記録しています。

 

図・4

 

 この2種類のデータを解析すれば、顧客の特性を把握することができます。例えば、

1)三平方の定理を使えば、顧客グループ単位で同じ内容のクーポン券を発行できます。

図5

 

 顧客の属性(ここでは、平均来店間隔日数と先月の購入金額)を使って顧客間の距離を計算し、距離の近い(=特徴が似ている)顧客同士でグループに分けます。(図5)

2)ベン図を描いてみれば、どの顧客にどの商品のクーポン券を発行すればよいか分かります。(図6)図6

 商品Xと商品Yを一緒に購入した割合が全体Sに対してどの程度か計算し、XとYを一緒に購入する割合が大きければ、Xを購入したがまだYを購入していない顧客にYのクーポン券を発行すると購入する確率が高くなります。

 クーポン券の発行にはまだまだ多くの数学が使われています。ちなみにこれは、お買いものデータサイエンスとも言えますね!

 

クーポン券の発行一つとっても多くの数学が隠されています。私たちの身の回りにあるモノは数学によって支えられていると言っても過言ではありません!

 数学は好きだが勉強して何に使えるの?将来役に立つの?と考え進路に迷っている学生さんは多いと思います。今回紹介したものはほんの一例ですが、数学を勉強しておけば様々な場面で役立つので、勉強しておいて損はない!むしろお得です。

※2016年11月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

株式会社KSKアナリティクス データサイエンス本部 データアナリスト
足立 悠
奈良女子大学大学院 複合現象科学専攻(博士後期課程・物理)奈良高専 電子制御工学科を卒業後、奈良女子大学 理学部 情報科学科へ編入。卒業後、京セラ(株)、(株)呉竹を経て現職。2社目在職中に奈良女子大学大学院 数学専攻で修士号を取得。現在は企業でデータアナリストとして勤務する傍ら、大学院で人間の行動データから事象(イベント)の予兆を検出するアルゴリズムの研究に従事。
ビッグデータ・IoT・人口知能(AI)に関する技術記事を定期的に投稿中!Analytics News(アナリティクスニュース)

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