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この文章を書いたのは?

カリフォルニア大学バークレー校数学科 PhDプログラム2年

高橋悠貴

アメリカの大学院生活

・はじめに

はじめまして。カリフォルニア大学バークレー校数学科のPhDプログラム2年の高橋悠貴です。簡単な経歴としては、16歳まで東京で育った後、カナダの高校、アメリカの大学に進学し現在はPhDプログラムという修士と博士課程に相当する5-6年のプログラムに在籍して2年目になります。今回は留学に至った経緯やアメリカの大学院について紹介させてください。

・留学の経緯

私の留学のきっかけは本当にひょんなことで、16歳の時にUnited World Collegeという世界各地から生徒が集まる全寮制の高校の存在を知り、(他にも理由はありましたが主に)面白そう!という動機で受験したことです。ありがたいことに合格し、約80の国と地域から来た200人の生徒と一緒にカナダの森の中で高校生活を送りました。それ以前に海外の長期滞在経験はなく英語もほとんど話せなかったのですが、やさしい同級生や先生方に支えられて本当に学びの多い充実した高校生活を過ごすことができました。

高校生の時は漠然と理系に進みたいと思っていたのですが専攻を一つに絞れずにいたので、少人数制の授業と入学時に専攻を決めなくてよい柔軟性に惹かれてアメリカのアイオワ州にあるリベラルアーツ大学に進学しました。そこで非常に教育熱心で、かつものすごい熱意をもってとても面白そうに数学の話をする数学の教授に出会い、計算や暗記だけではない大学数学の魅力にどっぷりとはまりました。結果的に数学と哲学の専攻で卒業し、現在カリフォルニアで大学院生として数学を勉強しています。

日本では大学と同じ場所の大学院に留まる人が多いようですが、アメリカでは違う大学に移動することが推奨されています。私がカリフォルニア大学バークレー校を選んだのは専門としている数理論理学がアメリカで一番盛んな大学であるからです。本校数学科のPhDプログラムには約150人の大学院生が在籍していて、約3割程度が留学生となっています。私は帰国子女ではなかったので、運よく高校留学させていただけたのをきっかけにそのまま肌があうということで大学と大学院もこちらに留まることになった、というのが正直な実感です。

・アメリカ大学院生活について

アメリカは広大な国なので、どの地域に住むかによってかなり生活が変わります。私が今住んでいるカリフォルニア州北部は過ごしやすい気候で、夏でも冷房はほとんどいらず冬に雪が降ることもまずありません。アジア人が多い地域でもあるので、日本食もかなり手に入ります!逆に学部生の時に住んでいたアイオワ州では冬は-20度になることもあり、また日本食は1時間ドライブしてもあまり手に入らないといった感じで、かなり住み心地は異なりました。(でもアイオワも好きです!下は草原が広がるアイオワの写真です。)

 

数学の大学院生としては、日本と同じように授業やセミナーに参加したり、ティーチングアシスタントとして学部生の授業を教えたりして、それ以外は主に研究に専念しています。私は留学することが絶対にいいことであるとは思いませんが、数学でアメリカの大学院に留学する利点としては、お給料が出るのでお金の心配をしなくてよい、数学の研究者となるには必須の共通言語である英語で勉強できる、異文化交流から学べる、などたくさんあります。特に生活費が賄える程度の収入を得られて、授業料も免除になるのは大きなメリットです。日本の数学界と比べて比較的女性の割合が多い(数学の大学院生の女性比率は約3割)というのも過ごしやすさにつながっているかもしれません。この記事を通して数学を勉強するのに海外に行くのもけっこうありかも、と選択肢の一つとして考えていただけたら幸いです。面白そう!という心意気があれば言語に不安があっても意外とどうにかなるものです。

 

※2024年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

カリフォルニア大学バークレー校数学科 PhDプログラム2年
高橋悠貴
専門は数理論理学の一分野であるモデル理論です。趣味は料理で、最近はエクレアを焼いたり庭の渋柿で干し柿を作ったりしました。また、吹奏楽やオーケストラでチューバを演奏しています。

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