key

この文章を書いたのは?

京都産業大学 理学部 教授

矢野 裕子

2021年、とある数学者の日常

数理女子をご覧の皆さん、こんにちは。初めまして。私は矢野裕子と申します。京都産業大学理学部に所属して、研究する傍らで数学を教えています。今回、数理女子への寄稿の機会を頂きましたので、いち数学者として私の思うところを綴ってみたいと思います。

先ず、自己紹介します。私は群馬県で生まれ育ちました。地元の公立小中学校を卒業して、いろいろあって東京の私立高校に進学しました。(いろいろあって、の部分を詳しく説明すると長くなるので割愛しますが、当時、末期ではありましたがまだバブル期で、地方からわざわざ東京の学校を目指すというようなイケイケな風潮が多少ながらもありまして、同じ中学の友達が多く通っているからという理由で選んだ塾で私もそんな流れに乗ってしまい、結果、東京進出を果たしたのでした。)高校では寮生活を送りました。ちょっと変わった学校で周りは帰国子女ばかり、よく分からないままに田舎から一人で出てきた私は大きなカルチャーショックを受けましたが、刺激的で面白い高校生活を送りました。いろいろあって、高3の春に進学先を数学科に決めました。(再び、いろいろあって、の部分は長くなるので割愛しますが、高校では沢山の楽しいことと共に多くの挫折を経験し、正に「いろいろあって」数学を勉強することを選択したのでした。)私は、中学生くらいの頃から漠然と研究者になりたいと思っていて、高3の進路選択時にはもう、大学院に行ってそのまま大学に残る、ということまで考えていたように思います。

そして、大学の理学部数学科に進学しました。大学ではのんびり過ごしました。好きな授業を取って(ロシア語や朝鮮語を履修したり、面白そうな教養科目を沢山履修したりしていました)、読みたい本を読んで、聞きたい音楽を聞いて、気ままに過ごしていたように思います。(当時は無自覚でしたが、今思うと、高校生活が私には刺激が強かったからかちょっと草臥れていて、英気を養っていたのでしょう。)大学に入ったばかりの頃は漠然と、代数をやるのだ!と意気込んでいましたが、専門の学びが深まるにつれて自分に代数の適性が全く無いことをうすうす感じて(当時はうすうすでしたが、今ではその適性の無さをはっきりと自覚しています)、研究室を選択するときにはほとんど迷い無く解析系(確率論)の研究室を選びました。大学4年から始まったゼミ(研究室での学び)はとても楽しかったです。本を読んでゼミで発表するのですが、予習するのが楽しかったですし、ゼミで発表することで自分の理解の足りないところに気付くというのはとても勉強になりました。ゼミが楽しいから、今も数学を続けているのかもしれません。結局、そのまま大学に残り、いろいろあって今に至ります。(またまた、いろいろあって、が出てきましたが、詳細を記すと長くなるので割愛します。本当にいろいろありました。困難もありましたし、恵まれた縁もありました。また機会があればエピソード等を紹介出来ればと思います。)

さて、現在の私がどんな生活を送っているのか。ざっくり言うと、朝起きて猫をなでて昼活動して猫をなでて夜寝る(猫は別、一緒に寝てくれない)、という生活です。ちなみに、うちの猫たちはいろいろあって福島からやってきた猫たちです。可愛いです。(更に、いろいろあって、が出てきましたが、うちの猫たちのことを記すとこれまた長くなるので割愛しますが、2011年の震災後に福島で保護された猫たちで、巡り巡ってうちにやってきました。)私は学生時代からずっと完全な夜型生活でしたが、今は子どもと生活しているので子どもに合わせたリズムで生活しています。夜の方が諸々捗るような気がするのですが、今は出来ないので、滞ることもしばしばです。ちなみに、この原稿も締切を延ばしてもらいました。このように、締切を守らない不真面目生活を送っています。でも、それ以外は割と普通の生活です。ゲームで遊んだり、本や漫画を読んだり、宝塚を観たりもしています。(コロナ禍の今は劇場に行くのは難しいのですが、これまたコロナ禍ゆえにライブ配信があるので有り難いことに家で気軽に観ることが出来ます。)数学者らしいエピソード(考え事をしていて池に落ちるとか何かにぶつかるとか)はほぼ皆無で、自分で言うのも変ですが事務作業もまあまあ得意な方で(締切は守りませんが)、かなり、普通の人です。あまり思考に没頭するタイプではなく、とはいえ、ブツブツと細切れに思考するのも向いていなくて、仕事が忙しいと合間に数学を考えるのが難しく、またあまり体力も無いので無理も出来ず、そんなこんなでこのところの研究の進みは本当にゆっくりです。

数学の研究は、自分で本や論文を読んで考えるということと、人と話す(ゼミをする)ということの両輪で進むものだと思います。人と話すために出張が欠かせないのですが、コロナ禍で国内も国外も出張が難しくなりました。しかし、私の場合は、実はコロナ禍以前からいろいろあって出張するのがとても難しくなっていました。(最後の、いろいろあって、です。詳細はやはり割愛しますが、仕事(大学の業務)と家事育児がある中での出張は「いろいろと」大変で、でも大変だろうと何だろうとやるべきことはやらなければ!という根性論もこう見えて私の根っこにもあるにはあって、だからまあ、頑張ったこともあるにはあったのですが、しかし、やっぱり(主に体力的に)しんどいわけです。私には精神論よりもしんどさの方が勝っていたので、この十年くらい出張は必要最小限に留めていました。)コロナ禍でオンラインのセミナーや打ち合わせが多くなり、移動しなくても参加が可能になった点は私にはとても良いことでした。人の話を聞く機会や話をするが増えて、やはり自分の研究の刺激になっています。

最後に、私は数学が好きですが、代数や幾何は全然出来なくて、解析も一次元にしか興味がなくて、実に興味の幅が狭いです。科学的な事象にも実はあまり興味がなくて科学や数学に纏わる面白い話みたいなのを紹介することも出来ないので、この原稿もこんな仕上がりになっていますが、世界は広く、数学者と言ってもいろんな人がいるので、中にはこういう人もいるのだと思ってもらえれば幸いです。

 

※2021年8月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

京都産業大学 理学部 教授
矢野 裕子
お茶の水女子大学理学部数学科卒業。専門は確率論。猫が好き。

SNS Share Button