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この文章を書いたのは?

慶應義塾大学 大学院基礎理工学専攻 数理科学専修

篠田 万穂

サマースクール in トリエステ

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夏休みにイタリア北東部の都市、トリ エステに行きました。そこで行われる数学のサマースクールと研究集会に参加するためです。約3週間の滞在でした。大学1年生で数学を勉強しようと決めたとき、ましてや高校生のときには数学の研究で海外に行く機会があるなんて想像もしませんでした。
始めの2週間はサマースクールといって、大学の授業と同じようにいくつかの講義を聞きます。講義のほかにも、演習問題を解いたり、質問したりできるチュートリアルの時間や、各々の研究を発表する短い講演などを途中に挟んで、朝9時頃から夜18時頃までスケジュールはびっしりでした。終わるのが夜といっても、夏のヨーロッパは日が長く、18時では日差しはまだ午後15時くらいに感じられます。元気のあるときは、滞在していたゲストハウスの目と鼻の先にある海で泳いだりもしました。日が沈む頃になると海面が金色に光ってみえ、とてもきれいな、澄んだ海でした。
当然のことながら、ほとんどのコミュニケーションが英語です。講義を聞くのも、質問をするのも、友人たちと話すのも英語でした。友人たちとの会話では、最も偉大な数学者はだれか、くらげや蛇を食べたことがあるかなど様々な話しが飛び交っていました。私は 思ったことをペラペラと英語にできるほど英語は得意ではなかったので、聞き役に徹するのが精一杯でした。そして伝えたいことを話せないことに想像していたよりもストレスを感じていました。3週目になると研究集会に参加する日本人の研究者の方数人にお会いして、一緒に食事に行くことができ、日本語で話せることを密かに喜んでいました。04_27_0204_27_05

 

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言語の壁を感じる一方で、友人たちとお互いの研究について話したり、演習問題を解いたり、週末には一緒に観光に出かけたりした経験はいい刺激を与えてくれました。特にイスラエルから来た友人の1人は気さくにも、「おはよう」と日本語で挨拶してくれていました。自分の国の言葉を話してくれたのがとても嬉しくて、私も彼の母国語であるヘブライ語の挨拶を教えてもらい、「ボケ トウ(おはよう)」と挨拶をしました。また、参加者の中には、子連れの妊婦さんもいました。不意に彼女から「あなたは日本人よね?」と声をかけられたときはびっくりしましたが、娘に折り紙を折ってほしいということだったようです。あいにく折り紙は持っていませんでしたが、紙を正方形にして鶴や花のバッジを作ってプレゼントしました。少し英語の環境に参ってきていた私にとって、これらは励まされる出来事でした。3週目、最後の1週間は研究集会でした。研究集会ではたくさんの講演を聞きます。正直なところ、どの講演も難しく、知らない言葉をメモして調べるくらいのことしかできませんでした。それでも講演の合間に、研究者の方同士が親しそうに話していたり、あちらこちらに設置してある黒板で議論していたりする様子は新鮮でした。高校で数学を勉強していた頃に、1人で黙々と問題に取り組んでいたのとは対照的な印象を持ちました。
新しいことを講義で学び、エネルギッシュな海外の学生たちに刺激を受け、黒板で議論しながら研究の話しをしている姿をかっこいいなと思い、充実した3週間であったと同時に、自分の課題も見えてきた3週間でした。04_27_04

この出会いや経験をこれからの研究の糧にしていきたいと思います

※2016年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

慶應義塾大学 大学院基礎理工学専攻 数理科学専修
篠田 万穂
自己紹介 数学のほかに好きなことは料理で、お弁当作りが日課です。

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