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この文章を書いたのは?

首都大学東京 理工学研究科数理情報科学専攻 准教授

高津 飛鳥

数理女子の「普通」の生活

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私の女性数学者としての実生活は、人目を引くような華麗なできごとに彩れつつも上品で落ち着きがあるにも関わらずちょっとした刺激を含む素晴らしいものである。平日は小鳥の囀りで目を覚まし、朝食には大好きなフレンチトーストをいただく。それから愛車の真っ赤なポルシェに乗り込み、その日の気分にあったクラシック音楽を聴きつつ通勤。そして大学では…とまぁ、大嘘を書いてみました。ごめんなさい。実際の私の平日は携帯のアラームで起きます。(ただし夏季限定で蝉目覚ましの場合もあります。)朝食はただのトーストとか果物とかその時々ですが、フレンチトーストはまず作らないです。だって面倒ですし。通勤は電車で、主に90年代J-POPを聴いています。(普通の自転車で通っていた時期もありますが、車通勤の経験はありません。)よく「数学者ってどんな生活をしているの?」と訊かれますが、私の場合に限って言えばこのように「普通」の生活をしています。ちなみに他業種の方に同様の質問をすると答は多種多様ですが、どうやらみんながみんな、自分の生活は一般的だと思っているようです。なので「普通」の基準は難しくあてになりませんが、それでも私の生活は女性数学者であるがゆえに一風変わっているとは思えません。また客観的に見て私の生活が華麗で上品で刺激的かというとかなり微妙ですが、今の生活は気に入っていると自信を持って言えます。常に楽しくいいことづくめで悩みや不安そして不満不平の一切ない生活ではないですが、好きなこと(数学)ができる良い環境だと感じています。

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そこで進学で色々と悩んでいる人は、何が自分のしたいことなのか全力で考えて、自分の進みたい道を選ぶのが私は一番だと思います。特に女子なのに理系は…と言われて悩んでいる人やそう思っている人はちょっと考えてみて下さい。なぜ、女子の理系は不安なのでしょうか?別にどの道に進んでも不安は残ると思いますし、女子なのに理系?と思う背景には、(私の知る限りでは)確固とした理由や証拠がないようにみえます。ただ、大学で数学科に進学して女性ならではの悩みが全くなかったとは言いません。しかしその悩みとはクラスに女子が少なく、その結果、クラス内で同性の友達が少ないのでやや寂しくそして講義をサボると目立ったというぐらいのものです。もちろん他にも数学科ならではの悩みはありましたが、それは性別に関係なく生じる悩みだと思います。そして数学者として社会人をしている今、女性であるがゆえに同業者から不合理なことを言われたりされたことはありません。

このように私の数学者としての実生活は、男とか女とかあまり関係ないところで営まれている普通だけれども楽しいものです。04_41_01

※2016年3月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

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