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この文章を書いたのは?

大阪大学大学院理学研究科 数学専攻 助教

久野 恵理香

研究と子育ての両立について感じること

私は現在、大阪大学大学院理学研究科で数学教員をしている久野恵理香と申します。専門分野は低次元位相幾何学という、柔らかく図形を扱う分野です(写真のような絵を描いて研究することもあります!)。この記事を書いているとき(2020年8月)、私は大阪大学に着任してから3年目であり、2年目は育児休業に費やしております。そのためまだまだ授業準備等に四苦八苦、研究も進んだり進まなかったり、毎日が教訓のような日々を過ごしております。更に、私には現在1歳の子どもがいるので子育てにも奮闘しております。今回、一経験談として「私が子育てを始めて思っていること」をこのリアルライフにおいてしたためたいと思います。

【学部生のときの考え】
 数学の研究者として安定した職に就くまでには、一般的には大学を卒業し、大学院修士課程・博士課程を修了し、ポスドクや任期付きの助教を経て、その後晴れて任期の無い講師や准教授等になるという過程を踏みます。
 私が大学院博士課程に進学するかどうか考え始めたのは学部1年生の時でした。その時私が悩んだ理由の1つは、結婚・子育てのことでした。自分の数学に対する熱が続く限り数学に携わりたいと思う一方で、大学における研究職で安定した職に就くまでには長い年数が必要で、その間に子育てをすることが当時の私は難しいと思っていました。
 つまり、学部生の時の私は、「数学者になる=家庭を築けない可能性がある」と思っており、数学者を目指すことと、家庭を築くことの選択に迫られていたように思います。

【実際のこと】
 学部生の時の子育てに関する考え方は、大学院を含めた約9年間の学生生活の間に柔軟に変わってゆき、次第に「数学も子育ても両方頑張る」ことが目標となりました。そして、研究と子育てを両立するためにはどのようにすればよいのか考えたり、私の身近にいる子育てをされている先生・先輩方に話を聞きに行ったりするようになりました。周りの方々の話を聞き、さまざまなロールモデルを見ることができたことで、子育てをしながら研究者を続けることが自然なことと思えるようになりました。
 私は出産前、育児休業を取ることや、子育てをしながら研究を続けることがとても不安でした。しかし実際は、子育て中の先輩数学者の方々から、研究と子育てを両立させるための制度や工夫していることの情報をもらいながら、育児休業から復帰した現在も数学を(出産前よりは明らかに時間は減りましたが)続けられています。また、調べてみれば、世の中には、仕事と育児を両立させるためのさまざまな制度がありました。そして現在、私の気持ちとしては子育てをしながらバリバリ研究することは不可能なことではないと思えるようになっています。
 ただ一方で、まだ制度が整っていないと感じる部分も多々あるので、近い将来そのような部分が改善されると良いと思っています。

【まとめ】
 これまでの経験を振り返ると、私は、研究者になるのも、子育てをするのも、周りの助けがなければ不可能なことでした。そして、これからも多くの人に支えられながら研究を続けていくと思います。
 きっと、現在将来のことで悩んでいる高校生・大学生の皆さんの道にも数多くの素敵な出会いが待っていると思います。ぜひ好きなこと、興味があること、挑戦したいことをたくさん見つけて、恐れずに最初の1歩を踏み出して欲しいです。
 私は研究者人生がスタートしたばかり、かつ子育てもまだ2年目なので、これから来るだろう困難を何も知りません。しかし、どんなときも数学を学べることの幸せを忘れず、そして支えてくださる周りのすべての人・環境に感謝して、大好きな数学・子育て・趣味なんでも欲張って進んでいきたいと思っています。

 

※2020年9月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

大阪大学大学院理学研究科 数学専攻 助教
久野 恵理香
好きなことは管弦楽鑑賞です。人生の夢の1つは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートを生で(良い席で!?)聴くことです。

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