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この文章を書いたのは?

国士舘大学理工学部 理工学科基礎理学系 准教授

新庄 玲子

数学者、ときどきイラストレーター

数学者と聞いてどんな人を想像するでしょうか。小さい頃は数学が得意で、数学が大好きで、数学の成績も良くて…、そんなイメージでしょうか。数学者になりたい、数学者なんて興味ない、数学者ってそもそも何?色んな人がいると思います。でも、このページを見ているということは、数学に興味がある人が多いのでしょうか。

実は、私は大学に入学するまでは、数学が好きでもなく、数学者になろうとなんて思ったことはありませんでした。だからこの記事を通して、こんな数学者もいるんだということを知ってもらえればと思います。

私が数学者になれたのは絵が好きだったからです。グラフィックデザイナーだった両親の影響で小さい頃から、様々な画材を自由に使い、暇さえあれば絵を描いていました。何も描かれていない真っ白な空間を(数学的に言えば平面ですが)好きなように埋めていく、そんな時間が大好きでした。算数や数学は嫌いではありませんでしたが国語や文系科目よりは好きだという程度で、一番好きなのは常に「美術」で、イラストレータかデザイナーになりたいと思っていました。大学に進学する際は将来、安定を求め教員になるのか、デザイン系の仕事を目指すのか悩んだ末、需要が多いと思われた数学の教員になろうと大学を決めました。

しかし、大学での位相幾何学の一分野である「結び目理論」との出会いが私の数学に対するイメージを一新し、数学者の道に進めることになりました。ここに並んでいる結び目の絵を見てどう感じるでしょうか。

私はこれを「かわいい」と感じたのです。数学的な対象物としてではなく、絵として捉えたのだと思います。もちろん、これをかわいいと感じない人も多いでしょう。でも次はどうですか。かわいくないですか?(笑)

LINEクリエーターズスタンプ にょろにょろへびくん結び目

 

こんな数学があるんだと知ったことで私は数学に興味を持ちました。講義では結び目を始め多くの絵(正確には図というべきでしょうか)を描きました。それが楽しく、どんどんと結び目理論にはまっていき、今に至るという訳です。

幾何学を学ぶ中では、「美しい」「かわいい」「きれい」だと感じる多くの図、絵、写真を目にしました。例えば数学の知識得ることで、波紋、ヒマワリの種の配置、自然界に見られる美しい形や多くの芸術作品の中に数学が見いだせることを知り、大学に入るまで数学と真面目に向き合ってこなかったことを後悔­­しました。そして、「なぜ高校までにこのような楽しいことを教えてくれなかったのか」と思いました(このあたりで人のせいにしているのはダメ人間ですが…)。数学を生かした絵を描くようになったのはこの頃からだったと思います。

正六角形による平面充填をベースにしたパターン

 

数学の知識を生かした作品を描き始めると、それを通して数学の楽しさを伝えたいという気持ちを持つようになりました。無名の私がそのようなことを発信できるのか疑問にも思いましたが、一念発起してコンペに応募するということを始め、いくつか賞を頂くことができました。

 

コンペの受賞者は、美術大学やデザイン学校の学生や卒業生、メーカに勤めているデザイナー、画家など、デザインに携わる方がほとんどでした。審査員や受賞者の方々は私の肩書や、数学とデザインの関係に興味を持ってくれました。デザインに数学を利用したいと勉強を始め、連絡をくれた方もいました。受賞をきっかけに、ちょっとしたデザインやイラストの仕事を貰えるようにもなりました。

私の制作活動なんて微々たるものですが、絵を描くことを通じて数学に興味を持ってもらえることに嬉しさ、そして楽しさを感じています。だからこれからも、数学者、ときどきイラストレーターとして、活動を続けていくつもりです。

 

※2017年12月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

国士舘大学理工学部 理工学科基礎理学系 准教授
新庄 玲子
ちょっとでも時間のある時は、PCで絵を描いたりしています。
今回の画像は全て「マウス」を使用して描いています。最近はペンタブを導入していますが、長年マウスを使用していたのでなかなか慣れません。
時間と場所があったら、大きな水彩画とかアクリル画とかを描きたいなぁと思っていますが、今のところは11.6インチのノートPCの液晶が私のキャンバスです。

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