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この文章を書いたのは?

上智大学理工学部情報理工学科

大城 佳奈子

数学から広がる国際交流

皆さん初めまして、上智大学で数学教員をしております大城佳奈子と申します。今回私の国際的な経験についてお話しようと思います。前置きしておきますが、私は帰国子女のように英語や他の外国語を不自由なくペラペラ話せるわけではありません。私の英語スキルは発展途上にあり(そうであってほしい…)、前進・後退の繰り返しです。

私は大学を卒業する頃までは、国際交流とは無縁な人でした。それどころか、英語に苦手意識があり、英語や国際交流は将来不必要だと勝手に思ってしまっていました。そんな英語嫌いの私に転機が訪れたのは、大学院に進学した1年目の頃です。所属研究室で数学の国際研究集会があり、私も勉強&お手伝いで参加することになりました。懇親会でのこと、外国の偉い先生に挨拶にいこうと友人に誘われ、とてつもなく緊張しながら話しかけに行ったのを覚えています。まあ、結果は撃沈です。会話はもちろん成り立たず、Pardon?連発、たまに聞き取れてもYesやNoで答えるので精一杯でした。その時には既に“私は数学者になる”という目標があったため、このままではこの世界で生きていけない…、本当にまずい…という気持ちが芽生え、英語や国際交流は不要という考えを改めることとなりました。

 それから3年後、3カ月程度、アメリカへ数学のための留学をしました。きっかけは、ある国際研究集会の懇親会でのこと、指導教員の先生に「A先生、B先生(アメリカの数学者)のところに勉強しに行ってみれば」と軽く言われたことです。突然のチャンスに心の準備は全く出来ていなかったのですが、「先生の下で勉強させてほしい。」とその場の勢いでA先生、B先生に言っていました。後からどうしようのパターンですが、後戻りはできません。もうなんとでもなれ~という気持ちでアメリカに行きました。アメリカでの生活は、A先生、B先生、ご家族の皆さんにとてもとても助けられ、何とかやっていけたのかな(?)というレベルです。A先生、B先生とご家族の皆さんには本当に感謝しています。


 また幸運にも、サンクスギビングデーとクリスマス、お正月をアメリカで過ごすという貴重な体験も出来ました。数学に関しても、毎日のように英語で議論し、大変だけど面白い経験をさせてもらえたと思っています。日本だとなかなか経験出来ないことばかりで、全てのことがとても勉強になりました。それから2年後にも、6カ月間、アメリカへ数学のための留学をしました。その時には、現地の大学生たちとルームシェアー用のアパートで生活しました。ロシア人とナイジェリア人のルームメイトと一緒に寿司パーティーをし、楽しく盛り上がった忘れられない思い出があります。数学でもアメリカの様々な場所で研究発表の機会をいただき、研究を通して多くの方と交流することが出来ました。共通の興味や考えを持っている人たちとの会話は、国籍、人種、母国語に関係なく、とても楽しくワクワクします。

 

改めて今思うことは、“あの時未知・未経験の世界に思い切って飛び込んでみてよかった”ということです。とても有難いことに、当時知り合った海外の先生方からのお誘いで、国際研究集会に参加させてもらえたり、アメリカ数学会の世話人までさせてもらえたり、と今でも新しい経験の機会を沢山いただいています。また、大学には多くの留学生がおり、時には英語で会話し、時には英語で授業を行うこともあります。熱心な学生との会話は、やはり、国籍、人種、母国語に関係なくとても楽しいものです。そう思えるのも、海外での経験があったからこそだと思います。これからも国内外関係なく、国境のない数学の世界で研究を楽しく続けていければと思います。

 

※2020年10月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

上智大学理工学部情報理工学科
大城 佳奈子
趣味はピアノと体を動かすことです。
これまでマラソン大会に20回くらい出場しました。
ピアノは聴くことも弾くことも好きです。

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