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この文章を書いたのは?

愛媛大学理学部

加藤 本子

写真展”Women of Mathematics: A Gallery of Portraits”開会式に参加して

2019年10月10日から11月1日まで、東京都のEU大使館で写真展”Women of Mathematics: A Gallery of Portraits”が開催されました。その開会に伴い、科学界における男女共同参画についてのフォーラムが開催されました。

はじめにPatricia Flor駐日欧州連合大使、欧州研究会議議長のJean-Pierre Bourguignon先生、日本数学会理事長の寺杣友秀先生らによる開会の挨拶があり、数学界での女性の活躍への期待が述べられました。特にPatricia Flor駐日大使は、自身も博士号を持つ女性として、誰もが偏見に阻まれることなく活躍できる社会の実現を願う挨拶を述べていました。

 

 

次に、女性科学者三人による基調講演がありました。一人目の講演者の石井志保子先生(清華大学)は、日本の数学界における男女共同参画について講演しました。佐々田槙子先生(東京大学)・坂内健一先生(慶應義塾大学)によるデータレポートに基づき、日本における大学院生や数学会員の男女比、諸外国との比較などの様々なデータが紹介されました。その中には、国立10大学の博士課程における女子大学院生比率がこの15年間で半減しているというような、特に衝撃的なデータも含まれていました。これらの現状を踏まえて、数学が本来は普遍的な学問であり、特定の属性を持つ人に特別な努力を必要とさせることがあってはならないということが述べられました。また、「Diversity makes vitality」というキャッチフレーズで、研究者の多様性が研究の活性化につながることが強調されていました。

二人目の講演者のSimona Settepanella先生(北海道大学)は、自身の経験を紹介しながら、STEM(科学・技術・工学・数学)領域の男女共同参画の現状と展望について述べていました。展望の一つとして、多様なキャリアパスの構築が、研究者の多様性に繋がるのではないかという提案がありました。例えば、研究のキャリアパスにおいては現在競争性のみが重視されているが、協同性を重視することで多様な人材が確保できるのではないかという指摘がありました。また、現状に対して常に問題提起していくことの重要性を強調していたのが印象的でした。

三人目の講演者のMaria Leptin先生(欧州分子生物学機構(EMBO)ディレクター)は、EMBOによる豊富なデータを引用し、女性科学者が研究活動を進める際に直面する問題とその対策を議論していました。科学界における男女平等を実現するという目標に向けて、データを継続的に取ることとその分析に基づいた対策を続けることが重要だと感じました。

三つの講演を通し、共通して述べられていたことがいくつかありました。まず、女性が科学研究を始める段階での、ロールモデルの重要性です。特に、研究を始める段階(例えば学生の段階)で、ロールモデルとなる存在が身近にいることが、大きな助けになると実感しました。また、女性の科学研究を阻むバイアスの存在が指摘されていました。これらのバイアスには無意識的に日常生活に根付いているものもあり、バイアスに気づいて問題提起をすることの難しさを感じました。最後に、研究者の多様性が研究活動の活性化につながるということが、どの講演でも強調されていました。

講演終了後は意見交換会があり、講演者や他の参加者と自由に話すことができました。他の女性研究者をはじめ、普段接する機会のない指導的な立場にある研究者やメディア関係者と話す貴重な機会を得ることができました。自分たちの経験も踏まえて、男女共同参画の現状について様々な意見が出て、議論が尽きませんでした。

※2020年1月掲載。情報は記事執筆時に基づき、現在では異なる場合があります。

著者略歴

愛媛大学理学部
加藤 本子
ファンタジー小説が好きです。自由に想像できるという点で、数学と似たところがあると思います。

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